Iot気象防災システム
気象データに対するニーズ
気温や湿度、⾵向・⾵速、気圧、降⽔量、⽇照時間、⼈⼯衛星画像――。気象に関する実測データや予報データを需要予測やサービス向上などビジネスに活⽤する企業がここ1〜2年で急増しています。気象データを活⽤した新ビジネスの創出を⽬指して2017年3⽉に発⾜した産官学組織「気象ビジネス推進コンソーシアム」の会員数は、2年で発⾜時の約3倍となる600社を超えたとされ、気象事業者に加え、IT企業や農業、⼩売り、保険など幅広い業界から集まっています(出典︓⽇経コンピュータ、2019年5⽉30⽇号より引用)。同記事の取材に対して東京⼤学の越塚登教授は、気象データの活⽤が活発になった理由として、「被害予測や需要予測などにおいて、ベテラン社員に代わり⼈⼯知能(AI)を使う事例が増えてきた」点を挙げています。企業は季節変動と過去の実績などをAIに学習させていますが、それだけではどうしても予測精度が上がりません。「試⾏錯誤する中で、ズレの原因は気象データを学習データとして⼊⼒していないことにあると多くの企業が気付いたのでは」と越塚教授は分析しています。
これらの要請に応える為、企業等の既存のデータ収集・分析システムとの連携が可能な観測機材の開発が求められています。
Iot気象観測に求められる機能
観測機材に求められる機能として最も重要なことは、気象データの利用を望む企業等が、簡単に、気象データを利用できる点というです。温湿度、風向風速、気圧、降水量、日照時間等の観測データは、それぞれの観測値を収集するための機材・センサーが異なるため、観測した後、デジタル化して取り扱いやすいデータに変換することが必要です。また、測定場所とデータ分析をする施設は異なるケースがほとんどですので、変換されたデータを遠隔地へ伝送する必要があります。さらに、複数の地点で観測している場合には、伝送された複数地点のデータを集計・整理するためのサーバーサイドのデータベース機能が求められます。これらの複合的な機能を一括して提供することが、Iot気象観測を提供するシステムに求められる機能といえます。
従来の気象観測
従来の気象観測では、各センサのデータを一旦データロガーに集約し記録を行い、データをLANや通信機で解析分析するサーバーに集約し活用してきました。電源工事や信号線の敷設が必要がとなり機器費用と工事費用が負担となり、多点観測を行うことが難しかったのです。また、観測地点により通信インフラが区々であり、高額な通信コストが必要となるケースもありました。さらに、データを集計し分析するサーバ環境もそれぞの観測ニーズに応じて構築するため、環境構築に加えて運用コストの負担が大きくなっていました。
Iot気象観測に対する期待
従来の気象観測に対して、Iot気象観測では、低消費電力の通信機と気象センサが融合し、汎用低額な広域センサネットワークを利用することなどにより、計測データを手軽に、安価に、クラウドやプライベートサーバーで収集、モニタリングできるようになってきました。これにより安価に多点観測が実現され、局地データの収集、多点によるデータ解析により精度の高い予報が行えることが期待されています。
実際に自治体の気象防災、企業の気象防災BCPへの活用が広がっており、現場では従来システムより気象データの収集が手軽に、安価に導入され、Bigデータの活用も可能となっています。Iot気象センサで安価に観測できるため、自治体では多点観測、局地観測による現場データの把握が進み、適切な避難判断、警報、危険個所の適正なインフラ整備を行うことができます。また、企業では、工場内の風、雨の事前被害対策(設備保全、早期復旧)、環境基本法遵守、従業員の労働安全法遵守等に対応することが可能になってきました。
無線通信ネットワークの課題
今後、気象観測データの活用が進むためには、観測網の拡大に比例して大きくなるデバイス費用と通信費用をいかに抑えるかが重要なファクターとなります。この点で、余分なものを削ぎ落とし、必要十分な機能を安価に提供できる通信方法が求められています。特に設置工事の容易性から、無線通信ネットワークの必要性が強く認識されてきました。これまでの無線通信ネットワークの方法としては特定小電力無線やBluetooth、無線LAN、携帯電話網(3G, 4G)などが使われていましたが、通信距離不足で観測データの収集に満足できる性能を提供できているとはいえません。加えて、携帯電話網、無線LANは、性能が過大で高価格、消費電力も大きく実用性に難点があります。
LPWA:Iot気象観測に最適の無線通信
このような状況の中で、2010年代半ばに通信距離が長いLPWA(Low Power Wide Area)が急浮上してきました。一般にLPWAは消費電力を低いうえ、価格も安く、通信料金も安価のため、従来の無線通信ネットワークの問題を克服できると期待されています。一方で従来の無線通信ネットワークと比較すると、LPWAの通信速度は格段に遅いため、これまでとは異なるアプローチで観測データの収集加工、伝送を工夫することが必要となります。LPWAを用いたデータ通信サービスはまず欧米で始まりました。2012年から、仏シグフォックス社による「Sigfox」や米セムテック社が開発した技術を用いた「LoRa」など、独自仕様のLPWAによるサービスが相次いで登場しています。また、欧州では2015年頃から、従来、主に3G携帯電話網が使われていたデータ通信市場を、LPWAが取って代わるようになってきました。さらに、携帯電話関連機器ベンダーを中心に、4G(LTE)携帯電話網の仕様として、セルラーLPWA(LTE版LPWA)が規格化され、通信事業者によって採用されつつあります。
Iot気象観測においてもLPWAによる無線通信ネットワークを利用することによりさらなる観測網の拡大と普及が期待されていますが、新たな通信方式に対応するためセンサとの接続や観測データの一次加工、伝送間隔等、改良を加えていくことがポイントとなります。
Iot気象観測システムの具体的な実装
1.Iot気象防災システム
計測項目:温度、湿度、風向、風速、雨量、pH
データ記録:ロガー、パソコン(インターネット経由、LTE通信)
電源:AC100V
2.Iot気象センサ
計測項目:温度、湿度、傾斜、風向、風速、雨量、気圧
データ記録:クラウドサーバー(インターネット経由、LTE通信)
電源:太陽電池
●Iotセンサ親機
●インターネット経由でデータ記録、モニタリング
●風向風速計
●雨量計
3.Iot雨量計
安価な多点観測を実現
計測項目:雨量
データ記録:クラウドサーバー(インターネット経由、LTE通信)
電源:電池駆動
●インターネット経由でデータ記録、モニタリング
●多点観測
4.Iot水質センサ
計測項目:水位、pH、濁度、DO
データ記録:クラウドサーバー(インターネット経由、LTE通信)
電源:AC100V
●インターネット経由でデータ記録、モニタリング